手の感覚を磨く理由

紙の裏表や服の肌触りを確かめるときに指で触ったり、重さの違いを比べるときに手に持って調べたことはありませんか?「色」や「明るさ」は目で見なければ分かりませんが「弾力」や「重量」、「温度」や「湿度」などは目で見るよりも手の感覚の方が繊細な違いがわかります。熟練の寿司職人が握るシャリの米粒の数はほぼ一定になるとテレビで見たことがありますが、手の感覚を磨き上げると無意識でも驚くほど繊細で正確な作業ができるようになります。この手の感覚を活かして体の異常を見つけて回復を促す技術が整体操法です。

病院のように機械で血液の成分を分析したり病原体を確かめることはできませんが、体の中で起こった異常は硬直や温度の変化などで体の表面にも現れます。長い年月をかけて、多くの先人が臨床経験を積み重ねた知識の集積が整体のエビデンスです。昔は普通に使われていた解熱剤がよくないと言われるようになりましたが、整体では昔から熱は出したほうがいいと一貫しています。薬の効果のデータではなく、生きた人間の体の変化を追いかけたデータが整体のエビデンスです。

ただし先人の知識を活かすも殺すも術者の手の感覚次第です。目の前の体の状態を正確に読み取ることができなければ知識は役に立ちません。体の状況に合わせて技術を使うことではじめて本当の効果が出るのです。症状に合わせて技術を使うだけでは十分な効果は得られません。知識が増えただけで体は変わりません。だから私たちは常に手の感覚を磨く訓練をしているのです。

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