大人が喜ぶ作品と子供が作りたいもの

前職が絵描きの私は、月に2回子どもに絵画と造形を教えています。
美術を初めて教えたのは大学を卒業したばかりの2001年だから、もう20年近く美術を教える仕事に携わっています。

ぼくの教室は絵を描く人がいる、工作をする人もいるし、見て遊んでいるだけのような子もいます。もともと知人がやっていたクラスを引き継いで担当した「絵画教室」だったのですが、子どもたちの様子を見ていると長い時間描いていられる子供は少数だったので、絵に限らず様々なことができるようにしました。そろそろ自由工作教室にでも名前を変えようかと思っています。

自由にそれぞれが作りたいものを作りたいように作るスタイルは、児童相談所一時保護所で働いていた時に確子どもたちと一緒に作りあげました。

テーマは設定しないでいろいろな素材を用意して、それぞれが好きなものを好きなように作ります。
自由にやらせても作れない、技術を教えるべきだという人もいますし自分もそう思うところもありましたが、一時保護所で実践をして考えが変わりました。


作れるようになるまで大人が見守ることができないから、あるいは評価をされる環境で上手に作らないといけないと子どもが思うから萎縮して作れないのです。もちろん苦手な子もいるけれど、ほとんど(90%以上)の子どもは周りを見ながら学び、自力で作ることを身につけていきます。

大切にしていることは子どもが作りたいものを、作りたいように、作れるようにサポートすることです。
本当に作りたいものを作るとき、子どもたちは創造する力を発揮します。
大人が喜ぶ作品作りにならないように、子供が作りたいものを自由に作れる教室作りを心がけています。

情報は確かに便利だけれど頼りきりになると、今までになかったこと、情報が役に立たない場面に出くわしたときに自分で考えて乗り越える力がなくなってしまいます。
自由に絵を描いたり物を作ることを通じて、教わったことをできるようにすることではなくて、自分の力で考えてやり遂げる力を育てたいと思っています。

素材の可能性を広げるために少しだけ作って見せたり、作りたいものはあるけれどどうしたらいいかわからない時、今の力ではちょっと難しい時は手伝ってあげたり、作り方を教えます。必要な技術を必要なでけ教えてあげると吸収がいいし、こちらの想像を超えた発展を見ることができます。

整体も似たところがあります。施術で体の働きを妨げているところをゆるめるわけですが、それの効果を持続させたりさらに高めるために自分で体操をしたり、生活に気をつけてもらうのです。自分の力を発揮するからこそ体が変わるのです。

美術も整体も大事なものは自分の内に秘められた、もともと持っている力を発揮することです。私は少しだけそのお手伝いをするだけです。教室で子どもたちを見ていても、整体院でお客さんを見ていても、人間の心や体に秘められた力は本当にすごいなあといつも思うのです。


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